◆ゾウナについて
どこから来たのか。何をしようとしたのか。それは、なぜなのか。
物語に登場するボスは、名は広く知れわたっていますが、それに反して、詳
しいことの多くは謎に包まれているものです。
謎といえば、とある漫画を思い浮かべます。「謎」に焦点をあてたその漫画
は18頁にわたり、まだ説き明かされない多くの謎に一つの解釈をあたえたも
のでした。あくまで筆者の推論であり「公認」ではないけれど、今まで忘れて
いた、あるいは気にも留めなかったことについて改めて考えさせてくれます。
漫画のタイトルは「ワルキューレの謎」。『ローザの冒険ファンブック』に
掲載されたそれは、題名のとおり主人公ワルキューレについての話でしたが、
無論、ワルキューレだけではなく「ワルキューレの冒険」のボス、ゾウナにも
同様に謎はあります。しかし、これより先の文章は、推論、解釈と呼べるほど
しっかりしたものではなく、ゲームをしていて私なりに感じたことをただ書き
連ねただけのものです。感じたことに思いをめぐらす、その一点ではおそらく、
他のプレイヤーやあの筆者と同じに。
倒してもすぐに分身が現れるため、剣を振るっているだけではいつまでたっ
ても倒すことはできない。もっとも、それを利用して経験点を稼ぎ、まとめて
レベルアップすることもできましたが。ボスで経験点稼ぎができるとは今考え
てもかなり独特でしょう。
このように珍しいタイプのボスですが、マーベルランドに暮らす住人たちと
はどこか一線を画す、あるいは雰囲気のようなものが違うと感じました。
例えば、取扱説明書(FC版)にあった「不滅の王」という言葉であり、
イラストから受けた印象「冷酷、暗さ」。さらにゲームでの印象があわさって
ゾウナに対するイメージはできあがっていったように思います。“世界が創造
される以前にあった闇(虚無と言い換えてもいい)が実体化した存在”と。
時の流れと無縁な“闇”は絶望を連想させます。時の鍵を奪ったのも、マー
ベルランドの支配が目的なのではなく、すべてを無に帰す手段として。
ゾウナが“絶望”なら、ワルキューレは絶望をしりぞける“希望”といった
ところでしょうか。
ところで、ゾウナの手にした時の鍵は、もともと神が作ったものです。取扱
説明書の「ものがたり」によると、はるか昔、人々は無限の命を持っていたと
いいます。無限の命を持っていたために、大地に人があふれ、飢えと争いが絶
えなかった、と。こうして人の心はすさんでゆき、魔物をも生みだしたのです。
余談ですが、魔物は時間が創造されるよりも前から存在していたことになります。
こうした状況を見かねた神は、マーベルランドに大時計を築き、すべてのも
のに生まれそして去る“時”を定めました<時間という概念の創出>。そして、
大時計に時の鍵を差し込むことにより、ゾウナや魔物たちを時の狭間に封印し
たのです。
のちに時の鍵は、死を恐れた男によって抜き取られます。自分の死、誰かの死、
そのどちらを恐れたのか。「ものがたり」においても語られてはおらず、本当
のことは誰も知りません。いずれにせよ、彼もまたゾウナと間近で対面した一人
でした。
有限の時と無限の時との境界で、求めていたものを手にした瞬間、そして時
の鍵を奪われた瞬間、あの男はゾウナに何を見たのでしょうか。